ご冥福。

自分は知らないけれど、常連さんが亡くなった。
朝からお昼くらいまでいる常連さんなんだって。
今日お通夜だったそうで、社員さんや前から居たバイトの人は参列して来たらしい。
夕方頃、誰も通ってないのに店の自動ドアが開いた。
S谷さん、今日田中さんお店に来ましたよ。
ありがとう、って意味かなぁ。寂しくて来たのかな。
自分はその人のことは知らないけれど、いつも座るという卓番を聞いて、せめてと思いお冷とおしぼりを置いてみた。
夕方から夜にかけてすごく混んでたから、遅い時間にしか持成せなくてごめんなさい。
いつも何頼んでたとか聞いてなかったから、何にも出せなかったな…。
また来たら、今度は私のことも覚えて下さいね。
ウチの店は結構古くからやっていて、お年寄りの常連さんが多い。
いつもお店に来てくれる様、自分の事を覚えて会いに来てくれる様、もっと頑張ろうと思った。
私はただのバイトだけど、自分の名前を覚えてくれて、会いに来てくれる人も居る。
常連さんが当たり前の様に挨拶してくれて、自分もいつも頼んでくれるメニューを覚えてただ出すだけだったけれど、その人がいつも来るかって言ったらそうじゃないんだ、って改めて思った。
あたしはその人が見えなくなっても、ちゃんといつもの様に珈琲を出せるかな。
その人は自分の足で歩く事が出来なくなっても、あたしに会いに店に来てくれるかな。
掃除とかバッシング、一つ一つを丁寧に、いつでもベストな状態で迎えられる様頑張りたい。
「この店が好きだから。」「良い接客をしてくれるから。」そう言って気に入って貰えるよう、もっと精進したい。
今までのバイト、続けられた所は本当に好きだけど、今のお店も大好き。
大切なものが一つ出来た、お祖父ちゃんお祖母ちゃんにも来て欲しかったな…。
見て欲しかったぁ…